Go to English site →


東京湾ホエールズ ( 2018-10-26 )

SPECIAL REPORT!! - 雁渡 さいとういずみ SOLO -



※画像をクリックすると拡大します
※敬称略

雁渡(かりわたし)。
雁が渡っていくこの秋に吹く北風。ちょうどそんな淋しさを感じる今夜の外気。HOWLのステージにはシンガーソングライターのさいとういずみが立っていた。
東京湾ホエールズを初期から知り、遠く広島県福山市から一人のファンとしてその動向に目を向けてくれていたアーティスト。
ここで歌うことに価値を感じ、少しの重圧や畏れも感じ、それでも尚、ここに立つ。東京湾ホエールズとしては今夜このステージには大きな意味がある。
彼女にとっても、関わる多くの人々にとっても新しい一夜が幕を開けた。

そっとピアノの前に腰をかけ、演奏を始める彼女は戸惑いや萎縮のような感情を少しだけ纏いつつも、近くで見つめる彼女の観客たちの心を支えとして、しっかりと歌い出す。
柔らかく、優しく、軽やかなピアノの音と一緒に、彼女の感情を鑑のように写す歌声が聴こえてくる。
冒頭、彼女の抱えている不安はカメラを向ける著者にも移り、複雑な感情を抱かせたが、その不安は一気に晴れる。とても心地いい。彼女は何を不安に感じていたのだろうか。
そんな疑問が湧いてくるほどに綺麗で透明な世界観、そして童心を思い出させてくれる言葉たち。

一つ一つの歌はストーリーだ。
自分の中の引き出しにしまわれていた、たくさんの景色や人物がどんどん頭の中に膨らみ、たくさんの景色を思い出させてくれる。
「こんな景色があったよな。」、「あの人は今頃どうしているかな。」
不思議と自分の思い出に寄り添ってくる彼女の歌。懐かしさの中でたまにフッと笑ってしまうようなお茶目なフレーズ。
さいとういずみという暖炉を囲み、皆で暖を取っているかのように暖かい空気がHOWLに充満していく。

借りてきた猫。
この歌を歌う前に彼女が言った。自分はどのステージに立っても借りて来た猫のようになってしまう、と。
それだけを聞けば、アーティストとして自分のカタチを持っていないかのようにも聞こえる言葉。
「借りてきた猫」を歌う彼女と今日ここまでのステージを考えるとそれも頷ける。確かに彼女はこのステージ対し、特別な感情を抱き、恐る恐る立っている。が、それはさいとういずみというアーティストにとって決してネガティブなことではなく、むしろ彼女の魅力を引き立てる、一つの大きな要素となっているように感じる。
不安、恐れ、萎縮、重圧。そんなネガティブであるはずの感情を歌に乗せる彼女は、心もとなく火花を散らす線香花火のように美しく、優しかった。

東京湾ホエールズで毎回カンパリソーダを片手に音楽を楽しむ一人の観客がいる。
彼は音楽が心地いいと必ずと言っていいほどそっと目を閉じ、眠りと目覚めの間にいる。一種のバロメーターのように彼を見るのがいつしか習慣になった。
今夜の彼は心地好さそうに目を瞑っている。そのことは一つの答えだと思う。
休憩中にも彼女と談笑し、今夜は素晴らしい夜だと皆が伝える。後半のステージを見る限り、少しだけ彼女の背中を押すことができたのだろうか。
最後の一曲、歌のキーが一気に上がるフレーズでは、思わずシャッターを切るのを忘れ、その自信に溢れた声に耳だけを集中させてしまう。
ステージ終了後にプロデューサーの玉井夕海が、成長のスピードの速さに驚く。と言っていたが、私は今夜の前後半、ステージに上がる彼女とアンコールに答える彼女にもその変化は見て取れたように感じる。
音楽家ではない私がそんなことを言うのはおこがましいとわかっているが、玉井夕海が彼女にかけたその言葉は、私も彼女に伝えたかった。
借りてきた猫が、少しだけ居着いた猫に。今後、彼女がHOWLを訪れた時はさらにここを好きになり、もっと魅力的なステージを見せてくれるのだろう。
東京湾ホエールズに携わる一人の人間として、感慨深く、とても嬉しい夜が更けていった。


10月23日 出演者: さいとういずみ
制作 : 玉井夕海 不破大輔

~東京湾ホエールズは、遠い記憶を呼び覚ます時空の提案を目指し発足したスペシャルチームです。~
WISE OWL HOSTELS TOKYO は、2016年7月。東京・八丁堀駅から徒歩5分の交差点にオープンした新しいホステルです。 宿泊する方の8割は世界各地からの来訪者。『東京湾ホエールズ』の舞台は、その地下にあるSOUND & BAR HOWLです。深く暗い森をイメ ージし設計された音空間には、様々な国籍の旅人と混じり、地元八丁堀で働く人々やこの場所を目指して集う日本各地の人々が集っています。
近年、急激なインターネットの普及や社会情勢の変化と伴い、音楽や演劇を始めとするパフォーマンス業界や各種アートシーンに転換期が訪れています。オリンピックを控えた魔都・東京。その中心地に位置するWISE OWL HOSTELS TOKYOとの全面タッグにより発足した『東京湾ホエールズ』は、 新たな旅とエンターテメントビジネスの可能性を探り、遠い記憶を呼び覚ます時空の提案を目指します。


- 次回開催情報

山口コーイチ SOLO
2018.10.30 19:00 開場

※リハーサルなどの状況により多少前後する事がございます。ご了承ください。

Entrance : ¥2000 + 1drink
30歳以下(申告制) : 1drink order please

出演者:山口コーイチ

1722年に完成したバッハの平均律クラヴィーア曲集一巻について。この曲集は24の長調と短調で書かれ、それぞれプレリュードとフーガで構成されます。同じ構成の二巻は1742年に完成しました。
バッハがこの曲集を作ったのは、鍵盤楽器の調律法の成熟をうけ、演奏が可能となった全ての長調と短調を網羅した曲集を作るという初登頂ともいうべき栄誉もさることながら、音楽を学ぶ人のための完全な教材を目指す意図があったように思います。
当時の音楽の様々なスタイルを網羅したカタログのようなプレリュード。さらには究極の対位法ともいえるフーガという技法の到達した音楽の境地を示しました。クラシックの世界では「ピアノの旧約聖書」と称されるこの名作に私が出会ってから、30年少したちます。二巻も併せて、ほとんど全ての曲にふれてきたのですが、2年ほど前にトライしてみたいと思ったのはコンサートピアニストのように、この二時間にわたる曲集を一度の演奏会で弾ききるということです。
それも出来るだけ完成度を高く、この時代にやる意味のある内容で、そして山口コーイチらしいものとしてやりきるという。そういうことを目指して2年間ほど様々な試行錯誤を重ねてきました。
バッハの面白いところは毎回弾いていると毎回発見があるのです。それに応じて解釈もどんどん変わるし私のピアノ演奏の技術もどんどん変わります。筋肉痛の場所もどんどん変わる。
筋肉痛は余計ですが、言いたいのは、つまり、これで完成!ということがないのです。今回機会をいただいたハウルでの演奏も、その時の平均律クラヴィーア曲集となることでしょう。これでよかろうとなることはあるんでしょうか。ある程度のクオリティが落とし所にはなるのだろうとは思いますが。
ハウルでの演奏にあたり、せっかくPAシステムと素晴らしいエンジニアの田中さんがいらっしゃるので、意図的に残響を作り、ヨーロッパで音楽をやる人たちが原体験として持つ反響しあう音楽環境を模擬したものを作ってみたいと思っています。もちろん人工的なものになりますが、だからこそ、それはここでしか聴けないものになるでしょう。
是非ご来場ください。

プロフィール : 三歳よりピアノを始める。国立音楽大学卒。クラシック奏法、和声、厳格対位法、音楽分析、指揮法などを学ぶ。J.S.バッハの作品に10代より傾倒しそれは今も続く。パイプオルガンによる古楽演奏法を徳岡めぐみ氏に師事。ジャズは独学。在学中よりジャズ、タンゴ、即興演奏、バッハを中心にした演奏活動をはじめ、国内はもとより、epocus(永井朋生ds.カイドーユタカb)でのインドネシアツアー、渋さ知らズ(不破大輔)でのヨーロッパ、カナダと20カ国以上に上るツアーに参加し、各地の重要なフェスティバルや大劇場に出演。2000年にはAAS(立花秀輝)で横浜ジャズプロムナードコンペティションにてグランプリ待遇。様々なレコーディングにピアニスト、オルガニスト、アレンジャーとして参加。現在は「オンゾ アニマムジカ(w/青山健一 映像)」「シワブキ(w/磯部潤ds)」「ゲンゴクインテット(w/定村史朗vl.柴田奈穂vl.糸永衣里vla.不破大輔b.)」「山口コーイチカルテット(w/高橋保行tb.村田直哉tt.清水良憲b.)」「山口コーイチトリオ(w/不破大輔b.つの犬ds.)」を主宰。また「渋さ知らズオーケストラ(不破大輔)」「川下直広4(川下直広ts、不破大輔b、岡村太ds、山口コーイチp)」「リマタンゴ(廣澤哲ts.山口コーイチp.清水良憲cb)」「AAS(立花秀輝as.山口コーイチp.カイドーユタカcb.磯部潤ds)」等に参加、他にも様々なセッション、レコーディング、アレンジ等々。埼玉県ときがわ町在住。 PHOTO BY MURATA YOSHIKAZU


ABOUT | MENU | MONTHLY | TOPICS | RENTAL SPACE | ACCESS | RECRUIT | CONTACT

©︎2017- SOUND & BAR HOWL